イベント情報
『をちほ展』
おかげさまで、『をちほ展』は、平成18年10月29日無事終了致しました
期間:平成18年10月21日~29日(会期中無休)
場所:加島美術
入場:無料
開場時間:午前10:00~午後6時
展示会出展作品 内覧
徳川慶喜筆「林和靖愛鶴之図」について
幾多のドラマを巻き起こした幕末維新期の中心的人物・第十五代将軍徳川慶喜公は、実に多藝多才で詩、書、畫から写真に至るまで、何事にも興味をもち、それが又よく出来たようだ。
畫はむしろ油絵を好まれたようだが、墨絵は一橋家にいるときに、奥絵師の狩野深渕を呼んで山水畫を学んだ(『最後の将軍』-徳川慶喜、司馬遼太郎著、文春文庫)という。
が、遺作として遺されているものは皆無に等しく、新発見となる本作は鑑賞にも資料としても、堂々たるもので極めて貴重な作品と言えよう。
「林和靖愛鶴之図」として描かれた本図は、梅と鶴とをこよなく愛し清貧に甘んじた中国宋代の詩人・林和靖に思いを馳せたもので、鶴ヶ城ゆかりの会津藩・横山家に伝来したものである。
作品は全て″人なり″であるが、この和靖の風貌がどことなく慶喜公を彷彿とさせるのも、誠にほほえましい。
林和靖は古くから畫の題材として取り挙げられてきたが、かの一休宗純もその生き方を好み「梅花図自畫賛」(萬野美術館蔵)等、梅と「和靖」の語を添えた作品を遺している。
将軍職として江戸城無血開城等、さまざまな難局をのりこえた慶喜公の心底とは、まさしく和靖の境地に通ずるものがあったに相違ない。
筆禅会主宰
二松学舎大学教授 寺 山 旦 中
作者:西郷南州(さいごうなんしゅう)
画題:「三行書」種類:掛け軸
<読みと意訳>
楊花落盡子規啼聞道龍
標過五溪我奇愁心興明月
隋風直到夜郎西
柳の花も散りほとゝぎすの鳴く季節となった
唐代の詩人龍標の様に都に背を向け
幾山川を経行く故郷への道
私の心の中を癒してくれるような明月が出ている
時流にさからはず帰って行こう鹿児島へ
作者:浦上玉堂(うらがみ ぎょくどう)
画題:「秋水宣釣図」種類:掛け軸
50歳代後半の制作と思われる本作は玉堂としてはめずらしく絖本である。
遠山の断崖から垂直に落下する瀧、その水が流れて澱む辺りに糸を垂れる釣人、秋水_釣と記された四文字のとおり、淡い岱赭が初秋の趣きを上品に醸し出している。
玉堂自身絖本を試す意味もあったのであろう。この小品はよほど穏やかな出来と言える。
又、その墨色は絖本であるが故に湿潤たる「山水の気」を溌し、悠々の大自然を形成している。
鑑賞する者を無意識のうちに画中へと誘うこと間違いないであろう。煙霞帖に見られるデフォルメされた筆致と対極を成す画面構成で、玉堂独特の静逸で写生味溢れる優品と言えよう。