Yulia’s Voyage to Japanese Art ユリアの日本画浪漫紀行

Vol.07
女人図
野長瀬 晩花 Nonagase Banka
野長瀬 晩花 女人図

紙本 着色
136×40㎝ / 189×49㎝

Vol.07 野長瀬晩花『女人図』

ほぼ等身大と言えるサイズに、画面いっぱいいっぱいに描かれた女性が纏っているのは、四神に麒麟や虎などといった中国神話のモチーフの黒地の着物。
真っ赤に染まる空を背に不思議な笑みを浮かべた女性。この大胆で不思議な作品、実際に目の前にすると、かなりインパクト大です!

この作品だけでも伝わると思うのですが、野長瀬晩花の画風はとてもモダン。晩花はヨーロッパ留学を経験し、その目で見てきたポスト印象派など西洋美術からの影響を強く受けています。
画風はとってもモダンなのに、モチーフはいわゆる日本画的な作品が多いのも晩花作品の面白い点だと思いました。それもそのはず晩花は10代半ばから大阪で中川蘆月に、京都で谷口香嶠に日本画を学んだ上で、西洋的な視点や手法で作品を制作しました。
日本画は下絵を描いてから作品を描いていく様なのですが、この作品もその下絵があえて柄の様に透けて見えます。また、紙に岩絵具での彩色で、金彩もされています。髪の毛の描き方なんかも日本画っぽいなと思う点がいくつもあるのですが、その構図や色彩からは新しい時代を生きる晩花の姿が見える気がしました。
晩花は当時まさに「ハイカラ」といえる青年時代を過ごした様で、花街やカフェー、バーなどに顔を出していたなんていう逸話も残っています。竹久夢二と交流していたというお話も納得です。
新しい時代を切り開いていくアーティストには世界中どこでも起こることですが、当時の日本画壇ではなかなか晩花の作品は理解されなかったようです。
奇抜で斬新なだけのものって、時代性がかなり関係してしまい、後世であまり評価されないものが多いですが、晩花の作品は今見ても新鮮で楽しく、引き込まれるパワーを持った作品だと思います。
これまで、沢山の作品をこちらの連載で拝見させて頂きましたが、ここまで作品から作家の個性が溢れる作品を見たのは初めてです。なんだか現代アートを見ているような感覚でした。
 


 

【筆者のご紹介】 マドモアゼル・ユリア
DJ兼シンガーとして10代から活動を始め、着物のスタイリング、モデル、コラム執筆やアワードの審査員など幅広く活躍中。多くの有名ブランドのグローバルキャンペーンにアイコンとして起用されている。2020年に京都芸術大学を卒業。イギリスのヴィクトリア・アルバート美術館で開催された着物の展覧会「Kimono Kyoto to Catwalk」のキャンペーンヴィジュアルのスタイリングを担当。

https://yulia.tokyo/