WORK OF THE MONTH 今月の逸品

2020

2020.05

山本梅逸「浮島新霽図」

絹本 淡彩 田近竹邨箱書
39×65cm / 140×79cm

本作は天保六(一八三五)年、梅逸四十二歳の時の作品です。本作は、写生を基にしたと思しき構図と、優美に描かれた富士が象徴的な作品です。かつて現在の富士市周辺には大小の沼が点在しており、これらを総称して浮島沼と呼びました。浮島沼側からの眺望であるとすると、手前に見えているのは愛鷹山でしょうか。新霽とは雨上がりのすっきりと晴れた空を指し、晴れ間に神々しく姿を現した富士を描いた優品です。本作は五月六日まで開催中の美術品展示販売会「美祭 撰」に出品中です。

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2020.04

下村観山「春」

絹本 着色 共箱 昭和6年「故下村観山遺作展」出品
139×51cm / 223×66cm

本作は大正八年、観山47歳の時の作品です。観山は、人物を描く時に、仏教に関するものなど宗教的な題材を多く取り上げる傾向があり、本作のような美人画は大変珍しいものです。子猫をじゃらすほのぼのとした光景は、穏やかな春の日の平安を感じさせます。繊細な線描は猫や女性の柔らかな感触を、落ち着いた色調は二者の心安らぐ瞬間を表現しています。ありふれた光景を穏やかな春の日の象徴として捉え、それを表す線描と色彩に、線色調和という観山の技法の到達点が窺える作品です。

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2020.03

酒井 抱一画/菊池 五山・宮澤 雲山賛「鶏と烏図」

双幅 絹本 淡彩
中野其玉鑑定書 大正十三年十一月東京美術倶楽部第二回武藤山治氏売立目録所蔵
94×35cm / 183×50cm

文化12年(1815)、抱一は私淑する光琳の百年忌に遺墨展を開催し、その成果を「光琳百図」にまとめて出版しました。本作はその百図の中の一つを踏襲したものです。鶏は、琳派らしいたらしこみで軽妙に描かれており、生命感に満ちています。賛者の宮澤雲山は「ここに描かれた鶏の姿はまるで生きているかのよう。」と称賛しています。一方の烏は、琳派特有の水紋で羽が表現され、意匠性が強調されています。菊池五山は「皇帝の庭に栖まず、我が庭でも啼いておくれ、幸をもたらす烏よ」との賛を寄せ、ユーモアでかわいらしい烏を神の使いとして称えている。本作は実業家・武藤山治の旧蔵品で、3月20日から開催する「琳派展-ひきつがれる装飾と簡素の美-」でも展示・販売いたします。

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2020.02

曾我 蕭白画/二日坊 宗雨賛「紙雛之図」

紙本 水墨 國華一四三〇号所載
94×28cm / 176×34cm

これほどまでに奔放な雛図を描いた画家がいるでしょうか。それは今も昔も、この奇想の画家・曾我蕭白を除いては他にいないでしょう。後ろの男雛は踊っているのか、はたまた倒れているのか。両手を広げる女雛に至っては、着物すら纏いません。添えられた賛には「酔っ払って雛がいくつにも見えるぞ」の意。蕭白の画風によく知られる観る者を圧倒する程の緻密な描き込みや、計算し尽くされた構図設計などとは対極にある本作ですが、酔いに任せて興の赴くままに筆を走らせた蕭白の自由闊達な姿勢が楽しい作品です。津の俳人・二日坊宗雨との交流の様子も窺い知れる興味深い一作です。

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2020.01

慈雲 飲光 「阿 置字」

紙本
88×28㎝/175×41㎝

慈雲飲光は、江戸後期の真言宗の僧侶です。戒律を重視し「真言律」を提唱しました。能書家として知られる一方で、雲伝神道の開祖でもあります。千巻にも及ぶ梵語研究の大著「梵学津梁」を著しました。本作の「阿」という字は、宇宙の根源を表すとされるサンスクリットの最初の文字です。密教では、一切言語の根源であり、衆声の母、衆字の根源(※)であるとされています(※「衆声」「衆字」は、この世の全ての発声、全ての文字の意)。全ての始まりの文字と言うことで、2020年という節目の年の始めに、ぜひ飾っていただきたい一幅です。

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2019

2019.12

渡邊 省亭 「中蓬莱左右飛鶴之図」

三幅対 絹本 着色
共箱 中廻印譜切 
108×35cm / 176×48cm

旭日を望む蓬莱山に、長寿の象徴でもある鶴が美しく飛んでいる姿が描かれた吉祥画です。蓬莱山とは、古代の中国における想像上の神山です。山東地方の東海中にあるとされ、仙人が住み、不老不死の薬を作ったと言われています。本作の表具には、印譜裂が使用されており、細部までこだわった省亭の意匠が見て取れます。制作年代は明治40年代頃で、50代後半の作です。画家の円熟期の作品であり、画題も大変縁起が良く、新年を迎える時にはもちろん、慶事にも掛けたい一幅です。

2019.11

岡田三郎助「田園の冬」

板1号 油彩 田村一男シール
便利堂「岡田三郎助作品図録」所載
10×21cm / 30×40cm

本作は類例が非常に少ない初期の作品です。洋画家曽山幸彦の元で絵画の基礎を学んだ修行時代のもので、同門には藤島武二、和田英作など後に洋画家界で活躍する多くの人材がいます。三郎助は特にその色彩感覚において秀でた才能を発揮しました。暮れていく冬の田園に広がる張りつめた空気が、冴えた色彩と上品なタッチで丁寧に描かれています。初期の小品ながら、西洋古典絵画の様な品格と、三郎助の将来を予見させる色彩の妙を兼ね備えた優品です。

2019.10

司馬江漢・鏑木梅渓「草花群鳥虫図」

双幅 絹本 着色
96×33㎝ / 175×41㎝

司馬江漢と鏑木梅渓はともに長崎派を習得した画人であり、一時期浜松町界隈に居を構えていました。同じ画人同士、また画風を同じくする者として両者の間には交流があったことは想像に難くありません。本作には水汀に息づく生命が二人の筆で生き生きと描かれています。息をのむような緻密な筆致と鮮烈な彩色は長崎派の特徴ですが、何よりも驚かされるのは、江漢・梅渓の観察眼の鋭さです。軽やかに舞う蝶、息をひそめる蟷螂。その足の一本一本から触覚、翅の細部に至るまで、実物と寸分違わずに写し出されています。大陸からもたらされた最新の画風に衝撃を受け、それを己が物にせんとする熱い意志と、江漢・梅渓の競争心とが、執拗なまでの写実描写には込められています。

2019.09

浦上玉堂「二行書 隔葉…」

紙本 谷川徹三箱書
本紙112×23 全体186×35cm

歌意:蔦のような植物が絡みつき、所どころ紅葉している。嬉しいことにその蔦が、細かい棘の侵入を防いでくれている。

田能村竹田著『竹田荘師友画録』にこうある。「玉堂老人の字は古怪絶俗なり」と。浦上玉堂のその特異な書風は一見するだけで玉堂とわかるほどであると言われる。また、書が人を表すならば、その書風は玉堂の強烈な反俗精神を表しているかのようでもある。やや草書体まじりの行書体で揮毫された本作は、文字の一つ一つが個性を放ち、全体として独特のリズム感を湛えている。玉堂は「無一詩中不説琴」と詠った。琴の弦が大気を震わせやがて静寂が戻るその様を書いたようにも見え、その余韻の中に七弦琴の前に坐す玉堂の姿が見え隠れする。
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2019.08

両国花火図

六曲半双屏風 紙本 着色
本紙96×301 全体110×316cm

江戸中期(8代将軍吉宗の時代)に始まったとされる「両国の川開き」として開催された花火大会が描かれた作品です。この花火大会は最も古い花火大会として知られ、のちの隅田川花火大会となっていきます。
当時、両国には多くの花火師がおり、江戸っ子たちは夏の風物詩として花火を楽しみました。
現在と異なり、当時の花火は筒状花火で、花火師が船上で筒を持ち、そこから上げていました。この筒状花火などから、江戸中期〜後期の様子が描かれたものと推定することができます。
腕を競い合う花火師と、それを楽しむ江戸っ子たちの姿が詳細に描かれた本作品は、まさに「江戸の夏」を感じることのできる稀有な逸品です。

2019.07

高橋泥舟「知命…

絹本 梅園良正箱書
140×58㎝/198×74㎝

(大意)
五十歳になり髪も白くなった。
これまで良い時も悪い時も大空を眺めていた。
悠然とした静かな生活の中で
一人、梅花を愛でて老荘を読む。

幕末三舟として、勝海舟、山岡鉄舟と並び称される幕臣で槍術家として有名です。。過去多くの武芸の手練れたちがそうであったように、泥舟もまた武芸に秀でた能筆家として知られています。中でも本作のような楷書は珍しく、泥舟の真っ直ぐな気概の伝わる清々しい筆跡です。高橋泥舟の詳細はこちらから→ 作家詳細へ

2019.06

有元利夫「作品」

乾漆手彩色 20/20
H34cm×W24cm×D10cm

中世の宗教画がもつ神聖さと、仏画にみられる豊かな精神性を同時に湛えた神秘的な画風で知られる有元利夫。活動期間は10年ほど。独自の作風を確立し、38歳で短い生涯を閉じました。本作は古来より仏像の製作に用いられた乾漆と呼ばれる技法で作られたもの。有元容子夫人は有元の立体作品について「絵画作品より、つくりたい形が素直にストレートにあらわれている」と評しました。自ら手を動かし様々なものを自作することを好んだ有元。木彫は制作の合間の息抜きに楽しんで彫っていたといいます。独自の造形からは、仏像の温かみと、中世の聖人像の気高さを併せ持ちながらも、どこかユーモラスな親しみやすさがにじみ出ています。有元利夫の詳細はこちらから→ 作家詳細へ

2019.05

長澤蘆雪「躑躅群雀図」

絹本 着色 大井如水箱書 愛知県立美術館「長沢芦雪 京のエンターティナー」所載
108×36cm / 200×51cm

奔放に伸びた枝に、深紅の花を艶やかに咲き誇らせる躑躅。その生命力に負けじとするかのように、忙しく動き回る賑やかな雀たち。雀の囀りや羽音が聞こえてきそうなほど、臨場感たっぷりに初夏の情景が描かれています。蘆雪の非凡な画才とエネルギーとが画面から溢れてくるようです。天明後期、三十代半ばの作。

2019.04

池大雅画・中井履軒賛「武陵桃源図」

紙本 着色 山中蘭渓箱書 
昭和10年12月15日大阪美術倶楽部某家所蔵品入札目録所載 
昭和11年11月28日金澤美術倶楽部江州今井家並某家所蔵品入札目録所載
132×55cm / 207×72cm

日本文人画の祖・池大雅の画に、儒学者・中井履軒による「桃花源記」についての賛が寄せられています。本作は、大雅自身の登山をよくした経験を踏まえて、独自の遠近感と俯瞰的な構図で描かれています。山々は渇筆を重ねた輪郭線で立体感を表し、藍と代赭を施すことで山肌の陰影を付しています。また、満開の桜花は朱の点描により生動感に富み、画面から香るようです。その中を省筆で描かれた川はゆったりと流れ、観る者を桃源郷へと誘います。大雅は詩人・陶淵明による「桃花源記」の場面により、心の中に存在している文人画の本質を表現しているのではないでしょうか。

2019.03

尾形乾山「桜図」

扇面台貼付 紙本 着色 
「乾山遺芳」石川県美術館開館十周年記念
「琳派の芸術ー光悦・宗達・光琳・乾山ー名作展」出品
122×66cm

陶工として名高い乾山ですが、絵画においても優れた手腕を発揮しました。強く慕う兄の絵手本を元に、乾山は晩年にかけて自らの画才を開花させていきます。優しい筆致で描かれた墨の濃淡と、花の仄かな桃色が奥ゆかしい本作。桜とは思えないほどに幹が曲がり、大きさも非現実的であるのに、不思議と違和感を感じさせません。軽妙洒脱な光琳とは別の、世俗と一線を画すようなしみじみとした情趣。この素朴な美こそが乾山の到達した画境と言えます。尾形乾山の作家詳細はこちらから→作家詳細へ

2019.02

松尾芭蕉「梅まれに・・・」

紙本 大倉汲水箱書
28×36cm/129×64cm

俳諧を精神と向き合う文学に昇華させた俳聖・松尾芭蕉は、人生を旅とし、旅を俳諧にしました。本作は、芭蕉45歳の歳「笈の小文」の旅路で伊勢神宮を参拝した際の発句です。広い神域の中に梅の木を探し人に尋ねたところ、神に仕える童女の詰所にただ一本だけあると教えられました。その一本の梅の花が、真にゆかしく感じられたという感慨が詠まれています。筆致も美しく、千家十職の利斎による箱に納められており、それぞれの時代で大切に伝来されてきたことが分かる貴重な作品と言えます。松尾芭蕉の詳細はこちらから→ 作家詳細へ

2019.01

伊藤若冲「恵比須図」

紙本 水墨
104×41cm/197×55cm

大胆な遊び心が魅力の本作は、鯛と釣り竿のみを描くことで暗示的に恵比須さまの存在を表現する「留守模様」が用いられています。鱗の筋目描きの質感も見事で、翻した尾びれには躍動感があり、立派な鯛が跳ね踊り、めでたさが溢れる新年にふさわしい吉祥画と言えます。左側中央下部の「千画絶筆」の印は安永年間(1772〜1780)頃に使用され、特に気に入った作品に用いたとされる印です。伊藤若冲の詳細はこちらから→ 作家詳細へ

2018

2018.12

小茂田青樹「粉雪」

絹本 着色 共箱 東美鑑定書
127cm×41cm/221cm×56cm

本作は、作者の小茂田青樹が、高度な写実性に琳派の装飾性を加え、新たな日本画の境地にたどり着いた頃の優品です。「寒さの感じだとか、霜の朝の感じだとか、しかしそんな物は描こうといって描けるものではない、描けるものは形だ。形を描いて居るうちにただよひ出すものが気分になり、空気なりになってくる」と青樹は語ります。この「気分」や「空気」とは作品に宿る神気と考えても良いでしょう。緻密な線描が重なることで、次第に神気をまとった本作を是非ご覧ください。小茂田青樹の詳細はこちらから→ 作家詳細へ

2018.11

鈴木松年「御伽噺図

十二幅対 紙本 着色
119cm×31cm/191cm×43cm

豪快で迫力ある画風と激しい気性から曾我蕭白になぞらえて「今蕭白」の名を恣にした鈴木松年。本作は桃太郎や竹取物語などのお伽噺の印象的な一場面を、それぞれ大胆に描いています。そして、その勢いのある力強い筆運びは、観るものを物語の世界に引き込んでゆきます。個性溢れる人物や動物は表情豊かで、奇想に富んだ遊び心とユーモアが感じられる、数々の逸話を残した松年らしい放胆な作品と言えます。鈴木松年の詳細はこちらから→ 作家詳細へ

2018.10

与謝蕪村「案山子画賛」

紙本 水墨 松村呉春極書
本紙 98×27㎝  全体 182×30㎝

賛文を読むと、本作は小野小町の逸話の一つである「雨乞小町」に着想を得ていることがわかります。勢いのある筆致で描かれた案山子は、まるで嵐の前触れのようです。先月ご紹介した「高士閑適図」が細部まで書き込まれた作品であるのに対して、本作は好対照とも言えるシンプルな画面構図をとっています。それゆえにいっそう臨場感を持ち、見るものの想像力を刺激します。これこそ蕪村の成した俳画の醍醐味であり、本作はその魅力がいかんなく発揮された作品といえます。与謝蕪村の詳細はこちらから→ 作家詳細へ

2018.09

与謝蕪村「高士閑適図」

絹本 淡彩 田能村直入極札 
「南画十大家集」・「蕪村全集第六巻」所載
本紙 110×32㎝  全体 190×50㎝

本作は蕪村が55〜62歳頃の絵画完成期に描かれています。「俗を離れて俗を用ゆ」心持ちで表現した静かな世界は、どこか純朴で、温もりを宿し、観る者の心に沁み入って来るようです。遠山の淡い藍色と樹木の代赭色は季節の移ろいを表します。秋の空気に包まれて談笑する高士たちの一人は、空を眺め、少し離れて待つ侍童は何を話しているのでしょうか。和やかに描かれた人物が微笑ましい、独自の柔らかさと味わい深い持ち味が示された孤高の文人蕪村の象徴的な山水図です。与謝蕪村の詳細はこちらから作家詳細へ

2018.08

鈴木松年「暗流蛍火図」

絹本 着色 共箱
本紙 115×52㎝  全体 204×65㎝

曾我蕭白や岸駒に私淑し、奇想の画家として当時の京都画壇に君臨した画家・鈴木松年。豪快な画風と性格から「曾我蕭白の再来」と評され、当時をして「今蕭白」と言わしめました。多くの作品においては、激しく力強い気性を宿す絵筆が、珍しく夜闇の静謐を描いたのが本作です。焼け付くような昼日の暑さがあるからこそ、夜の水辺の蛍の風景の涼やかさが際立つものです。川面を渡る清廉な夜風と、飛び交う蛍の幽玄な光は、日本の美しい夏の姿。今年のような暑い夏には、このような情景が特に恋しいもの。本年は、鈴木松年の生誕170年・没後100年にあたる年です。松年節目の本年に、ぜひ本作を手に入れて、涼しい夏を独り占めしてみてはいかがでしょうか。鈴木松年の詳細はこちらから→ 作家詳細へ

2018.06

林十江「虎独風直図」

紙本 淡彩 松下英麿箱書 
板橋区立美術館「林十江」(昭和63年)所蔵
本紙 130×66㎝  全体 222×85㎝

吹き付ける風に向かい屹立して咆哮する猛虎。筆者は水戸の南画家である林十江。若冲、蕭白、蘆雪といった奇想の画家の系譜に連なる幻の絵師です。十江は立原翠軒に絵の手ほどきを受けましたが、決まった師に就いて伝統的な絵画様式を学ぶのではなく、ただひたすらに独学で業を磨き、独自の表現を追い求めました。その結果が十江にしか描けない動物画です。彼の作品が持つ独特の生気は、天賦の画才を持ちながらも不遇の中37歳で夭折した画家の、強烈な自意識の叫びと言えます。その迫力は、見る者の目を捉えて離しません。林十の詳細はこちらから→ 作家詳細へ

2018.05

白隠慧鶴「鐘馗図」

紙本 水墨
本紙 129×55㎝ 全体 228×70㎝

こちらを睨みつけるような鋭い眼光と、一気に描ききった勢いのある漆黒の衣紋線。白隠が本作に込めた魂魄の在り様を観る者に訴えかけます。賛に書かれているのは、謡曲「鐘馗」の一説より、鐘馗が菩提心をを起こし、国を守ろうと誓願を立てた場面です。本作が持つ迫力は、邪気を払う威光に加えて、自分の幸せより他人の幸せを願った白隠の想いとその決意が顕れたものです。白隠の化身である鐘馗の視線は私たちの魂を射抜き、その教えを魂に直接刻み込むようです。白隠慧鶴の詳細はこちらから→ 作家詳細へ

2018.03

三熊花顛「桜花蛙図」

絹本 着色
本紙 102×41cm 全体 191×43cm

桜画の名手として名を馳せた三熊花顛は、桜だけを主題に描き続け、後に三熊派と呼ばれる画派を確立しました。三熊派には、三熊露香、広瀬花隠、織田瑟々が名を連ねます。号の花顛は、花狂い、桜狂を意味し、貧しさを苦にもせず、画を描くにあたっては平然と仕事をこなしたといいます。生涯、生花を研究し続けた花顛の筆により紡ぎだされた桜は、その身の裡にやがて散りゆく儚さを内包し、より一層美しく咲き誇ります。うっとりと桜を眺める蛙は花顛自身なのでしょうか。花顛は遺言で、荼毘に付したあと川へ散骨し、桜の木を植えてくれと遺しました。本作は、それほどまで桜に執心した花顛の想いと、研鑽を重ねた技術が結実した一幅です。